シェンノワール開業までの道のり(下)

「シェンノワール開業までの(長く険しい)道のり」は今回が最終章です。過去を振り返りながらのこのシリーズは、同じ頃あったいろいろな出来事も一緒に思い出したりして、なかなか筆が進みませんでした。なのでなんとか終わらせることができてホッとしています(汗)

さて、葛藤を乗り越えてシェンノワールの卵である土地を手に入れた私達。開業までの残り半年はこんな感じで進みました。

■自宅はどうする?(2015年12月)

土地を手に入れた後、私達が最初に決めなければならなかったのは「自宅を何階にするか」ということでした。

賃貸併用住宅の場合、大家の自宅は1階 or 最上階にするのが基本です。ですが私達の場合、狭い土地を最大限利用するために考えられた設計が“中階段”だったので、建物のド真ん中を通路が走る1階は、自宅として利用する事ができませんでした。そうかと言ってエレベーターのない最上階の4階は、一番長く住むことになる私達には体力的に限界の日がきてしまうので、悩んだ挙句、賃貸物件として一番需要のある2階を自宅にすることにしました。

階を決めたら次は間取りや設備の検討です。

賃貸暮らしが長かった私は、それなりの機能があれば別になんでも…と特段の思いはなかったので、望むものは入居者の皆様との交流会に使えるような「広いリビング」があればそれで…というくらいだったのですが、そこに夫から「交流会を考えるならキッチンの作業スペースはなるべく広めの方がいいと思います。後は大型の食洗機があると便利ですよ」とアドバイスが。

なるほどさすがは料理担当(私は料理ができません…恥)、目の付け所が違うねぇと感心して建築会社さんにはこの3点を要望として伝えました。

こんな感じでざっくりとした要望を提示してまずは案を出してもらい、それを微修正をしながら少しずつ詰めていくやり方で、間取りや設備を決めていきました。

■賃貸部分は?

賃貸部分の間取りは、10月下旬に作ってもらった当初案が変更の余地のないものだったので(敷地が狭いので…)検討事項はほぼ設備のみでした。

犬を飼うことを前提とする設備として私達が参考にしたのは、その当時私が一人で住んでいたペット共生型(犬だけでなく猫もOK)の賃貸マンション。そこは大手ハウスメーカーの物件で、設備としてはハウスやトイレが置ける棚の下のスペースがあり、他にはペットの脚に優しいクッションフロアの床、張替えコストが抑えられる腰高で分割された壁紙という特徴がありました。

↓棚の下のスペースで用を足す風のKarubi(笑)

ただ参考にはしたものの、残念ながらそもそもの広さが違ったので、棚の下のスペースは断念せざるを得ず、クッションフロアについても見た目が安っぽかったのと、結局Karubiの爪が食い込んで跡が残ってしまい、ほぼ全てを張替えることになったりとデメリットも感じたので、採用を見送ることになりました。なので犬関連の要望としては「安っぽくなく滑りにくい張替えコストのかからない床材」「腰高で分割できる壁紙」「玄関外のリードフック」の3点を建築会社さんにお願いしました。

それ以外の人間用の設備は、自宅と同様に、まずは賃貸物件のプロである建築会社さんに案を提示してもらい、一人暮らし用賃貸を6軒渡り歩いたセミプロ?の私が住みたいと思えるか、そして一人暮らしの会社の後輩たちにヒアリングしながら決めていきました。ちなみに、コンロの1口から2口への変更は「料理する人にとって1口はありえません」という夫の強い意見を採用してのことです(笑)

■解体そして着工(2016年1~3月)

物件の引き渡しが年の瀬だったので、“とある中古住宅”の解体が始まったのは年明けから、私達が気づいた時には更地になっていたくらいの短期間の出来事でした。(ちょうどこの頃、“結婚式絶対反対!”の私と家族の手前やらない選択肢を取れない夫との間で冷戦が勃発しており、正直アパートどころではありませんでした…)
そして2月に入り、地盤調査や建築確認(建築計画が違法でないかの審査)、地鎮祭(セルフ)も無事終わり、あとは順調に工事が進むのを眺めるのみと気楽に過ごしていたところ、想定外の問題で頭を悩ませることになるのです。

↓更地になった“とある中古住宅”…

■追加費用の発生!(2016年4月)

4月に入っても私達にできることは何もなかったので、アパートのことはしばし忘れ、気が乗らない結婚式準備などと忙しい毎日を過ごしていました。

そんな中「想定外の事象が発覚したので至急打合せをしたいのですが」と、建築会社さんから、何やら聞くのを拒否したくなるような連絡がきました。連絡をもらってすぐに都内某所まで打合せに出向くと、どうやら“とある中古住宅”で使っていた下水道が仮の姿?だったらしく、新たな配管工事が必要になるという身の毛のよだつお話が…。その費用なんと250万円也。
ちなみに、この時点ですでに設備追加による持ち出しが100万円ほどある状態でした。少しの設備追加でも×6部屋分となると数十万単位で費用がかかり、事前にしっかり考えていなかったツケが回ってきている状態だったのです。

うーんそれは困った…としばし固まる私に対し、建築会社さんは「こんな策があるのですが」と解決策を提示してきました。それは、都市ガスではなくプロパンガスにすれば200万円は浮かせられるという“??”なプラン。よくよく聞いてみると、

解体した”とある中古住宅”はプロパンだったので、新たに都市ガスにするための工事費用が見積もりに含まれている
⇒ それをプロパンにすることで工事費用を浮かす
⇒ さらにプロパンの場合、初期設備はプロパンの会社が負担してくれる
⇒ すなわち工事費用と都市ガス用の設備分の費用が浮く
というなるほどなカラクリ。

まぁ250万円が50万円で済むのであればなんとかなるかな…とその場では同調してみたものの、その案をすんなりと受け入れることはできませんでした。それは、そもそもプロパンから都市ガスに変えようと決めたのは、毎月のガス代が高いプロパンは、私自身が賃貸を探すときにNGとしていた設備だったから。そして仮にプロパンにした場合、ガスボンベの置き場所は玄関の横しかなく、しかも賃貸+自宅の7戸分なので4本も置くことになるとのこと。

結局その場ではどうしても決断が出きなかったので「ちょっと考えさせてください…」と打合せの場を後にしてとぼとぼと家路に着きました。

250万円か…。結婚式にお金かかるしこれから引越しもあるし、そしたら家具を買ったり憧れのでっかいテレビやソファーも欲しいしなぁ…。
でも仕方ない、背に腹は変えられないしプロパンにするしかないか…とほぼ決心がついたのでその事を夫に伝えると、夫は私にこう尋ねました。

「大丈夫ですか…?毎日玄関横のガスボンベを見てはプロパンにしたことを後悔したりしないですか…?」

うぅっ…なんてスルドイ…(涙)

そんなわけで都市ガスのまま追加費用を受け入れる方を選んだのです。(今現在、あの時プロパンを選ばなくて本当によかったと心から思ってます)

■あっという間に完成!(2016年5~7月)

難題をクリアした後はベルトコンベアに乗ったも同然!刻々と見た目が変化していく建物の中では、建築会社さんが緻密に引いたスケジュールのもと着々と内装工事が進められていきました。

そんな中で私達にできることと言えば、床や壁、ドアなどの色味を決めるために、建築会社さんに言われるがままショールームに出向くことくらい。色なんてなんでもいいんだけど…と面倒に思いながらも、ショールームでは年甲斐もなくはしゃいだりして、ちょっとした“家を建てている感”を味わうことができました(笑)

■いよいよ入居者募集スタート!(2016年5月下旬〜)

工事が着々と進められる中、私達は7月末の工事完了予定に合わせて入居者募集の準備を始めました。家を建てるだけなら完成→引越しだけで済むのですが、アパートの場合は住んでくれる人を探さなければなりません。しかも私達の場合「犬を飼っている人」という難易度の高い条件が付きます。

そんなハードルの高い入居者募集、お師匠様からは「その地域の物件をたくさん取り扱っている4〜5社に相談して家賃を決めて、募集を開始してもらって下さい」というアドバイスがあったので、賃貸物件の検索サイトから選んだ仲介業者さん3社と、これからご近所さんとなる2軒隣りの地元密着型の仲介業者さんを訪問し、さっそく募集を開始してくれるようお願いしました。

とまぁこんな感じで6月頭には入居者募集をスタートさせたのですが、季節はもう引越しシーズンが終わった初夏だったので、ほとんど問合せが来ない日が続きます…。

■開業はしたものの…涙(2016年7月末)

建築会社さんの頑張りのおかげで、建物は予定通り3ヶ月で完成しました。これは本当に驚異的なスピードで緻密なスケジューリングの成せる技。既に多額のローン返済が始まっている大家からすると1日でも早く家賃が欲しいため、工期が短いのはとても助かるのです。

それなのに、入居どころか内見すら誰も来ない…(涙)

問合せはあれど犬を飼っていない人だったりと実を結ばないケースばかりが続き、開業時は大家の私達のみが入居者というそれはそれは寂しいスタートとなりました。でも待ちに待った建物の完成だったので、引越し直後は4階の窓から花火を眺めたり、自分ならどの部屋がいいかなど夫婦の会話を楽しんだりと、新しい環境を楽しむくらいの余裕はありました。

しかし…そんな状態は1週間と続かず、そこから最初の入居者の方を迎える11月までの4ヶ月間、悪夢に悩まされる日々が続くわけです(涙)

と、こんな感じで、アパートを建てたいと思いついてからたった1年で、シェンノワールは(名ばかりの)開業を迎えました。ちなみに夫とは開業の少し前に入籍+結婚式を済ませたので、“新婚生活=ツラく苦しい入居者募集生活”になってしまったわけなのですが、そのあたりはまた別のシリーズで書きたいと思います。

↓披露宴にはパネル参加の“ふうかるび”(笑)

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