シェンノワール開業までの道のり(中)

シェンノワール開業までの道のり(上)」の続きです。

犬専用のアパートを建てたいと思いついてからたった3ヶ月で、人生を賭けた契約書“その2”にサインを迫られることになった私(当時、契約書“その1”が未済の40歳独身♀)。

清水の舞台の先端で震える私と、その私と赤い命綱で繋がれてしまった夫の運命はいかに…。

■撤退?前進?(2015年11月頭)

人生を賭けた売買契約を週末に控え、「このまま進んでしまって大丈夫なのだろうか」と急に怖気付いてしまった私…。

思い返せば、勉強会が終わったその足で買付けを入れてから、ここまでわずか10日間。その10日間で、私達は4階建てプランを持って3つの銀行を回り、お師匠様や仲介業者さんと毎日のように電話やメールでやりとりをし、さらには私や夫の家族、アパート経営をしている夫の知り合いの地主さんやその方の懇意の仲介業者の社長さんなど、使えるツテはすべて使ってたくさんの人に意見を求め相談をしてきました。
でも話を聞けば聞くほど、考えれば考えるほど、何が正解なのかさっぱりわからなくなってしまったのです。

毎日のようにどうしようどうしよう…と悩む私を見て、既に人生を賭けた決断を済ませた婚約者(=夫 笑)は「そんなに急がなくても…、今回は見送ってもいいんじゃないですか…?」と提案してくれました。そうね…確かに失敗が許されない決断は焦ってするものじゃないかもね…と重圧から解放されたい私もそう思ったので、「今回は見送ろうと思うのですが…」とお師匠様に伝えました。
お師匠様は少し残念そうに「そうですか…。今後数年、条件に合う土地は出てこないかもしれませんが…」と言いつつも、私の葛藤を見てきたので止めることはしませんでした。でも私の葛藤を見てきたからでしょう、見送ったことを私が後悔しないようにと「せっかくなので、明日の建築会社の社長さんとの打合せは話だけでも聞いてみませんか?」と最後の一考の場を残してくれたのです。

「あら、やめるんですか?」by Karubi

■ついに決断!

翌日の仕事終わりの夜7時、すでに見送ることを決めていた私達は、かなりなローテンションで都内某所の打合せの場に向かいました。

打合せの目的は、建築会社の社長さんに、2階建てとするか4階建てとするかも含めどのような建物が建てられるかという話を聞いてみるというものでした。まだローンの目処が立っていない4階建てはそもそも実現可能かもわからない状況ですが、残りの1行は金利も高ければ望みも高かったので、並行して検討をすることになっていました。


「現場見てきましたよ、よくあんな土地見つけましたね〜。4階建てなんて奇跡的ですよ!」ご自身もアパート経営をされているという建築会社の社長さんは楽しそうに話し始めました。

「ありがとうございます…。でも4階建てにできても金利が高いので、収支のシミュレーションを見ると自信がなくて…」と、ローテンションの私は俯き加減で弱々しく返しました。すると、確かに金利は低い方がベストだけれどもアパート経営は始めてみなければわからないメリットがあるんですよ、と社長さん。「こればっかりは確定申告をしないサラリーマンには理解できないかな(笑)」とお師匠様と二人、アパート経営や賃貸併用住宅のメリットについて盛り上がり始めました。

確定申告をしないサラリーマンでありまだまだ不勉強な私には、そのメリットをきちんと理解することはできませんでした。でもアパート経営についてとにかく楽しそうに語るお二人を見ていて思ったのです。

“私達がやろうとしていることは普通ではないんだから、自分達の身近な人にいくら意見を求めても背中を押してくれる人なんていないんだ…。その世界を知らない私達には、今の時点で正解なんてわかるはずもない…”と。

そもそも私は勉強会に申し込んだ時点でその世界に飛び込む決心をしていたはず。
出会ってまだ3ヶ月と日は浅いけれど絶大な信頼を置いているお師匠様が信じられなかったら、そもそも私は何のためにここまで来たのか…。(もうプロポーズもしちゃったし…)

そして最後の決め手は、とにかく楽しそうにアパート経営を語るお師匠様と社長さん、元はサラリーマンというお二人が勧める世界がどんなものか見てみたい!という強烈な欲求が私の背中を突き飛ばしたのです。

よし、やろう!
ここで止まったら何も始まらない!
この二人を信じてみよう!

こうやって書いてしまうと上手い営業トークにやり込められた人に見えるかもしれませんが(笑)、私は一人その場で進むことを決めたのです。

そんな決意をした打合せからの帰り道、10日間の重圧から脱出してハイテンションな私の後ろには、「なんか真逆の方向に変わってるんですけど…」とひとり呟くローテンションのままの夫が。
「あ…なんか勝手に決めちゃってゴメンナサイ…」と謝るしかありませんでした(笑)。

■とうとう売買契約!(2015年11月上旬)

買付けから2週間後、とうとう“とある中古住宅”の売買契約の日を迎えました。
こちらとしては4階建てのローンの目処がつくまで契約を延ばしたかったのですが、そんな裏プランを知らない仲介業者さんと売主さんなので、早々に進めたいのは致し方なしです。

売買契約は宅建士同席のもと、売主と買主が顔を合わせて書類に印鑑をついたり、引き渡しの日を取り決めたり、手付金を受渡したりといった手続きを行います。この売買契約をしてしまうと「やっぱりやめます」はできません。(契約解除はできなくはないのですが数百万円の手付金は戻ってこないことに…)

そんな“もう戻れない”という不安だったりこれからの希望だったりが入り混じった私達の横で、宅建士さんは淡々と契約手続きを進めていきます。何枚もの書類にサインをしたり印鑑をついたりと、売主さん・買主・宅建士さんの三者によるテンポよい連携プレーが必要なこの作業、緊張感に包まれてはいるものの、途中のちょっとしたミスや譲り合いに小さな笑いが起こったりと終始和やかに進められました。

そんな作業がひと段落して宅建士さんが離席した際、「なんか疲れますね~(微笑)」といった感じで少し売主さんとお話しする機会がありました。聞けば、ご年配の売主さんは、親子二代に渡り50年間その土地に住んでいらしたとのこと。売却される理由はわかりませんが、どことなく寂しげに見えたのは、私達には伺い知れないたくさんの思い出のつまった場所を離れるという思いからでしょうか…。私達はそのような売主さんの思いとともにこの場所を譲り受けるんだな…と感慨深く思ったのを覚えています。

■4階建てに決定!(2015年11月下旬)

売買契約も無事終わり、残るターニングポイントは2階建てか4階建てかの2択のみ。

以前は4階建てなんて荷が重いと思っていた私達ですが、ここまで来ると何が何でも4階建てにしたくなるのが心情というもの(笑)。なので最後の1行の審査結果を祈るような気持ちで待ちました。

ただ一方で、仲介業者さん主導のもとに2階建てプランは着々と手続きが進んでいきます。
今後の流れとしては、①ローン本審査→②ローン契約→③物件引渡し(ローン実行)となるのですが、②のローン契約の前に4階建てプランのローンの審査に通らなければ2階建てプランで契約しなければならず、4階建てを諦めなければならないのです。

そんな時間との勝負の中、待ち望んでいた4階建てプランの本審査が無事通過したのは、売買契約から3週間後の11月も後半に入った頃でした。

やったー!
これで4階建てでスタートできる!

まぁ少々お高めな金利に不安もありましたが、ここまで来たら「この規模であれば大丈夫、スタートできることが凄いことなんです」というお師匠様の言葉を信じて突き進むしかありません。

こうして、仲介業者さんには、これこれこういうわけでゴメンナサイと2階建てプランのローンをお断りして、なんとか12月上旬に4階建てプランのローン契約を済ますことができたのです。

■物件の引渡し(2015年12月下旬)

年の瀬も押し迫った年末、いよいよ売買手続きの最後となる物件の引渡しの日を迎えました。

この“物件の引渡し”、もちろん土地と建物をこの場に持ってくることはできませんので、売主さんが物件を、買主がお金を、それぞれが受け渡しの完了を1つ1つ確認しながら進めていく必要があります。そのため売主さんと私達買主の他に、宅建士さん、仲介業者さん、司法書士さんが同席し、遠く離れた銀行にはローンを実行する担当者の方が待機するという鉄壁のフォーメーションが組まれました。

実際の手続きについては、私の口座を一瞬経由して銀行から売主さんの口座にお金が振り込まれ、売主さんの口座にお金が振り込まれたことを売主さん側が確認し、それをもって司法書士さんが土地と建物の登記を売主さんから買主に変更するという流れだったかと思います。(正直あまり覚えていません 汗)

こうして、2015年の年末に手にしたシェンノワールの卵は、これから半年かけて、中古住宅の解体→アパート新築と成長を遂げることになるのですが、その成長過程はまた次回!

↓成長しきった“シェンノワール”(=黒い犬)

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